株式会社オーリーズ × 株式会社プレイド(Databeat)
【SUMMARY】事例のポイント
- 抱えていた課題:便利なAIツールを社内配布するも現場に定着せず。特定プロジェクトで自動化を進めても、人の役割が変わらない限り、浮いた時間が重要性の低い仕事に吸い込まれる「消える生産性問題」が発生していた。
- 実施した施策:「作業の時短」を狙うのをやめ、ジュニアコンサルタントの仕事の一部(データ参照・記述的分析=モニタリング業務)を役割ごとAIに任せる「リプレイス型」へ転換。AIがデータを参照するための基盤としてDatabeat(BigQuery自動連携)を活用。
- 導入の成果:データ収集・集計の自動化により、朝のモニタリング業務時間を先行プロジェクトで約2時間から約30分に短縮。広告データを「作業コスト」から「AIの分析燃料」へと価値転換し、コンサルタントが「高度な戦略立案」「NPS®︎(顧客推奨度)向上(※注1)」へ集中できる最先端の支援体制を実現。
(※注1:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、およびNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。)
【第1章|課題提起】広告運用の現場が直面する「効率化の代償(消える生産性)」

株式会社オーリーズ 取締役副社長の足立 誠愛氏
全コンサルタントが運用実務を担う非分業型の体制と、高いNPS経営を軸にマーケティング支援を提供する株式会社オーリーズ(以下、オーリーズ)。同社では「まるで内製のような外部支援」をモットーに、支援品質の向上を目指して社内に専門組織「AIアクセラレーションチーム」を立ち上げ、AI活用の試行錯誤を重ねてきました。
しかし、その推進過程で直面したのが「ツールを導入しても使われない」「作業を効率化しても浮いた時間が重要性の低い仕事に吸い込まれる(消える生産性問題)」という、日々多くの広告媒体を運用する現場で陥りがちな共通の罠でした。
取締役副社長の足立 誠愛氏は、当時の業界的・組織的な課題感を次のように振り返ります。
足立氏:「AIで作業が早く終わったとしても、その仕事を担う人の役割が変わらなければ、浮いた時間は一人ひとりの一日の中に細切れで散らばります。使い方は本人任せになるので、悪気なく、もう少し丁寧にレポートを作り込んでしまったり、重要度の低い分析に時間をかけたりして、いつの間にか消えていくんです。
結果として、組織全体で見ると売上は上がらないし、費用も下がらない。それどころかAIのコストだけがかさんでしまう。これが『消える生産性』の問題で、私たちも実際にぶつかりました。」
【第2章|オーリーズが経験した失敗と葛藤】1年間で辿った「3つのフェーズ」
オーリーズでは、現在の取り組みに至るまでに、大きく3つのフェーズを通ったと足立氏は語ります。
【オーリーズが経験したAI活用の3フェーズ】
フェーズ1:セルフサーブ型
3ヶ月で20個のAIツールを開発し社内配布。
【結果】業務フローの外側にあったため、UI切り替えや判断のコストが勝り大半がお蔵入り。
フェーズ2:常駐型
特定のプロジェクトにAI専任者を置き、業務の内側にAIを組み込んで速くする。
【結果】業務は早くなるも、浮いた時間が手動雑務に吸収される「消える生産性」が発生。
フェーズ3:リプレイス型
速くするのではなく、ジュニアの仕事の一部を役割ごとAIへ(現在進行形)。
【結果】先行プロジェクトでモニタリングが人の業務から外れ、ミドル+AIで回るプロジェクトが出はじめている。
最初の「セルフサーブ型」では、DifyやNotion AIを用いて3ヶ月で20個ほどの特化型AIツールを作り社内配布したものの、業務フローの外側にあるツールは心理的・作業的なコストが高く、定着しませんでした。
続く「常駐型」では、特定のプロジェクトにAI専任者を張り付け、朝のモニタリングの集計や異常検知をAIに手伝わせる仕組みをワークフローの中に組み込みました。モニタリングにかかる時間は減りましたが、モニタリングを担当する人の役割は変わっていないため、ここで前述の「消える生産性問題」にぶつかります。
「業務は速くなる。でも、役割が変わらなければ、浮いた時間は別の仕事に吸い込まれてしまう」——そう考えた同社は、AI活用の進め方を変えることにします。
【第3章|Databeatとの出会いとデータの「価値転換」】AI時代を支える広告データ基盤
同社が次に選んだのは、作業の時短を捨て、ジュニアコンサルタントの仕事の一部を役割ごとAIに任せる「リプレイス型」への転換でした。
常駐型との違いは、モニタリングを速くするのではなく、モニタリングという仕事そのものを人の役割から外すことです。「リプレイス型」では、朝のモニタリング業務をAIが担い、人はその報告を読むところから朝の仕事が始まります。速くするだけだと、浮いた時間は一人ひとりの一日の中に散らばり、使い方が本人任せになります。役割ごと外すと、「このプロジェクトはミドルとAIで回る」という単位で余力が生まれるため、外れたジュニアを別のプロジェクトや診断の訓練に回す、という組織の判断で活かせます。
同社ではまず、広告運用の仕事を「目標設計」「分析・立案」「実行」「顧客コミュニケーション」の4つに分け、そのうち「分析・立案」をさらに次の4つに整理しました。
- データ参照:広く深くデータにアクセスでき、カラムやCVの定義を理解して、数字を正しく読める状態をつくること
- 記述的分析:対目標・前週比などの比較や、媒体別・キーワード別などの因数分解によって、「何が起きたか」を説明すること
- 診断的分析:アカウントの変更履歴、競合の動き、季節性など、数字の外の情報と照らし合わせて、「なぜ起きたか」を説明すること
- 処方的分析:「何ができるか」、つまり記述・診断を踏まえて、キーワードの停止、予算配分の見直し、訴求の変更といった打ち手の候補を挙げること
このうち前半の「データ参照」と「記述的分析」を合わせたものが、いわゆる朝のモニタリング業務です。全プロジェクトに共通し、参照するデータも比較的単純なため、ここであればAIに任せられると同社は判断しました。
ここを選んだ理由は、データさえ整っていればAIが安定してこなせる領域であり、同時に、コンサルタントの時間を最も使っていた集計作業でもあったからです。この「起きたことを整理する作業」をAIに任せることで、人は「なぜ起きたのか」「どう対応するか」を考えることに時間を使える構造を目指しました。
そして、このリプレイス型AI活用を成立させるための決定的な土台となったのが、AIが迷わず正確に数値を参照・判断できるデータインフラ「Databeat」でした。
【人間(コンサルタント)の役割】
・診断的分析(なぜそれが起きたのかの紐解き)
・処方的分析(どんな打ち手を打つべきかの策定)
・高度な戦略立案・顧客コミュニケーション(NPS向上)
【AIエージェントの役割】
・データ参照(定義に基づく数値の把握)
・技術的分析(前日・前週比較、異常値の自動検知)
【Databeat(データ基盤)】
・40以上の広告媒体データをBigQueryへ自動集積・構造化
オーリーズではDatabeatを活用し、40以上の広告媒体データをBigQueryへ自動集積・名寄せ統合。そのうえで、Claude CodeがNotion上のプロジェクト情報を参照しながら、BigQuery上のデータにSQLを投げて集計し、何が起きたかを報告する環境を整備しました。
【従来の広告データ利用】
各媒体から手動CSV抽出 ➔ Excel等で整形 ➔ 人間が集計・報告
(手作業の「過去コスト」)
【Databeat導入後のAI活用環境】
DatabeatがBigQueryへ自動格納 ➔ AIエージェントが直接アクセス ➔ 自動分析・判断
(AIを動かす「未来の燃料」)
足立氏:「データ参照と記述的分析をAIに任せるには、必要なデータに広く深くアクセスできる状態が前提になります。DatabeatでBigQueryにデータが自動で溜まっているので、AIにSQLで集計させて、何が起きたのかを説明するところまで任せられる状態が作れました。
従来、広告データはレポートを作るために人が手作業で集めるものでした。それが自動で溜まる状態になったことで、AIにモニタリングを任せるための土台になったと感じています。」
【第4章|人とテクノロジーの最適解】コンサルタントが「顧客価値向上」へ集中する体制へ
Databeatを土台とした「リプレイス型」AI活用の導入により、現場では次のような変化が起きています。
1. 朝のモニタリング・報告作成時間を最大90%削減
数値チェックから報告ドラフト作成にかかる時間が、ミドルコンサルタントで約2時間から約30分に短縮されました。ジュニアコンサルタントがゼロから行うと、半日かかる規模の仕事です。
2. 深掘り調査の高速化と仮説精度の向上
数値悪化の要因特定においても、体感3時間かかっていた作業が1時間程度に圧縮。AIが「採用した仮説」だけでなく「検証したが棄却した仮説(季節性や学習リセットの否定など)」まで提示するため、人間は意思決定と顧客提案にリソースを集中できるようになりました。
3. ジュニアの成長スピード加速と「消える生産性」の克服
データ集計から解放されたことで、先行プロジェクトでは、ミドルもジュニアも「なぜ起きたのか・どう対応すべきか」から仕事が始まるようになりました。一方で、AIの報告を読むだけではジュニアに数字の相場観が育たないため、報告を読む前に自分で予測し、AIの結果と答え合わせをする訓練に切り替えているところです。
足立氏:「データを集めて整える作業はDatabeatとAIに任せて、人はその先の『なぜ起きたのか』『どうするか』と、お客様との議論に時間を使う。先行プロジェクトでは、モニタリングが『やる仕事』から『受け取る仕事』に変わりました。」
【第5章|今後の展望とメッセージ】AI時代の新しい広告代理店モデルを切り拓く
オーリーズでは今後、先行案件で確立した「Databeat×AI」の運用モデルを全社プロジェクトへ展開し、「AIの活用を前提とした組織づくり」を推進していく方針です。
最後に足立氏は、自社のAI活用やマーケティング支援のあり方に悩む企業・代理店に向けて、次のように締めくくりました。
足立氏:「この1年半で分かったのは、便利なツールを増やすことより、自分たちの業務を言語化して仕組みに落とすことのほうが大事だ、ということでした。広告運用の場合、その仕組みの土台になるのがデータ基盤です。組織として広告業務をAIに置き換えていくなら、信頼できるデータ基盤がないと何も始まりません。私たちにとって、それがDatabeatでした。
組織全体への定着は、まだまだこれからです。ただ、『速くするAI』から『役割を担うAI』へという方向性は間違っていないと感じています。これからもテクノロジーと人間の強みを融合させ、クライアントへ『まるで内製のような外部支援』という最高の価値を提供し続けていきます。」

| 企業名 | 株式会社オーリーズ |
| 所在地 | 東京都港区赤坂4丁目8-15 赤坂KOSENビル7階 |
| 代表者 | 代表取締役社長 鈴木 多聞 / 取締役副社長 足立 誠愛 |
| URL | https://allis-co.com/company/ |
| 事業内容 | 運用型広告の戦略立案、体制構築、運用支援及びそれに付随するマーケティングテクノロジーツールの運用支援 |
