MCPAは、広告運用にとって重要な指標です。MCPAは、コンバージョン単価(CPA)に関連しており、マーケティング活動を効率化させるために使用します。また、企業のMCPAを計算すると、マーケティングチームが期待どおりに機能しているかどうかを把握することができます。
しかし、広告運用を実施する上で「MCPAの定義が理解できていない」「どうやって分析すれば良いかわからない」というお悩みはないでしょうか。本記事では、企業の広告担当者様へ向けて「MCPAの基礎知識」「MCPA分析の全体像」を紹介しています。
WEB広告における「MCPA」に関する基礎知識
「MCPA」に関する基礎知識を紹介します。「MCPAの定義」「MCVの定義」「CPAとの違い」「MCVRとの違い」についてみていきましょう。
WEB広告における「MCPA」とは?
MCPAはMCV(マイクロコンバージョン)を1件獲得するのにかかったコストを表す指標です。主に、総CPAの何パーセントがマーケティングコストに費やされているかを計算するのに使用するので、単体では利用しません。
MCPAを分析すると、総CPAの内訳が分析できるので、CPAが向上したときの課題発見時に利用されることが多いです。
【参考】広告におけるMCV(マイクロコンバージョン)とは?
MCVは、コンバージョンまでの中間地点を表す指標です。自社のコンバージョンが「商品購入」であれば、下記3つがMCVとなります。
- ECサイトに訪問(MCV)
- 商品ページ閲覧(MCV)
- 商品のカート追加(MCV)
- 商品購入(CV)
MCVは、自社コンバージョンによって異なります。「会員登録」が自社コンバージョンであれば「TOPページ訪問」「会員登録入力フォームへの訪問」等がMCVです。
マイクロコンバージョンは、最終的なコンバージョンよりも手前にあるユーザーのアクションに対して設定します。 ランディングページによっては、マイクロコンバージョンを設定することで、ユーザーの行動が把握できたり、広告運用改善のヒントにもなり[…]
【参考】CPAとの違い
CPAとMCPAの違いは下記の通りです。
- CPA=コンバージョン獲得にかかった単価
- MCPA=MCV獲得にかかったコスト
CPAは、1件のコンバージョンを獲得するためにかかった総費用です。MCPAは、コンバージョンをアシストする複数の施策がCPA内でどのようなバランスを示しているかを確認する指標だと理解してください。
【参考】MCVRとの違い
MCVRは、マイクロコンバージョンを達成した割合です。「MCVR率=マイクロコンバージョン数÷セッション数×100(%)」で求められます。「CPA」と「MCPA」は単価の指標、「CVR」と「MCVR」はコンバージョン率に関する指標です。
MCPAの計算方法
MCPAを計算するには、各施策でのCPAと総CPAが必要です。例えば、コンバージョンを獲得するにあたり「施策A」「施策B」のMCVRを設定した広告運用を実施していると仮定します。
- 施策A =6,000円(CPA)
- 施策B =4.000円(CPA)
まずは「施策A」「施策B」の総CPAを計算します。
総CPAをもとに、MCPAを計算していきます。
上記計算式により、総CPAの60%が施策Aで利用されていることが分かります。
WEB広告運用においてMCPAを意識する重要性
MCPAは主にCPAが増加したときの分析指標として利用します。急激にCPAが増加したときには、MCPAを計算すると、どの施策のコストに問題があるか把握できるためです。
WEB広告運用において「MCPA」を活用する3つのメリット
WEB広告運用において「MCPA」を活用する3つのメリットを紹介します。
- CPA増加の原因を特定できる
- 費用対効果を改善できる
- 企業全体のパフォーマンス分析もできる
メリット1.CPA増加の原因を特定できる
MCPAを活用するとCPA増加の原因を特定できます。WEB広告運用では、費用対効果の代表的な指標であるCPAを常に分析する必要があります。しかし、全体のCPAが増加した時に、どの施策に問題があるか判断するのは困難です。
このときにMCPAを活用すると、CPAが増加している原因となる施策を特定することができます。MCPAが悪化している施策を見つけたら、その施策を改善するための戦略を考えてみましょう。
メリット2.費用対効果を改善できる
MCPAを活用すると、費用対効果を改善することができます。施策ごとのMCPAを算出すると、コストパフォーマンスが高い施策を見つけられるためです。パフォーマンスが高い施策を見つけた後に、予算を追加するといった対策も有効といえます。
メリット3.企業全体のパフォーマンス分析もできる
MCPAを活用すると、企業全体のパフォーマンス分析も可能です。MCPAは広告運用だけではなく、企業全体の分析にも利用できる指標となります。
上記計算式を活用すると、営業チームとマーケティングチームが利用可能な予算をどれだけ効率的に使用しているかの情報が得られます。MCPAの傾向を監視することで、支出が過剰になっている部署や、場合によっては支出が不足している部署がわかり、今後の支出パターンを変更するためのヒントにもなります。
WEB広告運用において「MCPA」を活用する3つのデメリット
WEB広告運用において「MCPA」を活用する3つのデメリットは下記の通りです。デメリットも理解した上で、MCPAを活用するか判断しましょう。
- マイクロコンバージョン(MCV)の設定が必要
- 手間がかかる
- シンプルな施策には向いていない
1.マイクロコンバージョン(MCV)の設定が必要
MCPAを活用するには、新たにMCVの設定が必要です。自社でMCVのポイントを立案し、ポイントごとのタグ設置も必要になります。
また、MCVの設定には「流入経路の把握」「ユーザー属性の見極め」なども必要になるため、通常の広告運用よりも多くの知識が必要です。
2.手間がかかる
MCPAを活用すると手間がかかります。これまで分析作業で管理してきた指標に加えて「MCPA」「MCV」といった指標が追加されるためです。MCPAを活用するのであれば、新たにレポートを作成する手間も発生します。
Google広告のレポート作成では、コンバージョン列にMCVの獲得数を反映させる場合、コンバージョンとMCVを区別できないケースもあるため、手動で2つのコンバージョンを分ける必要もあります。
3.シンプルな施策には向いていない
MCPAは、シンプルな施策には向いていないデメリットがあります。MCPAは、複雑な施策を実施している企業向けのものだと理解しましょう。
例えば、商品購入をコンバージョンとした広告出稿で、広告をクリックすると商品専用のLPに誘導するキャンペーンを出稿している場合、LPのページ内でコンバージョンが完結するので、MCPAを活用してもあまり意味はないということです。
WEB広告運用においてMCPAの活用をオススメしたいシーン
WEB広告運用においてMCPAの活用をオススメしたいシーンを3つ紹介します。下記内容に当てはまる方は、MCPAを活用してみましょう。
ブログページと商品ページの比較
「ブログページ」→「商品ページ」→「コンバージョン」といった導線設計の場合、MCPAの活用はおすすめです。各導線上にマイクロコンバージョンとして設定しておけば、この導線上のどこで一番コストが掛かっているかを把握できます。
「商品ページ」→「コンバージョン」のMCPAが高い場合は「商品ページ」に問題があるのではと、判断することができるので、サイト改善に繋がりやすくなります。
CPAが上がった場合
CPAが上がった場合、MCPAの活用は適しています。施策ごとのMCPAを計算すると、CPAを増加させている施策を特定できるためです。
CPAが下がった場合
CPAが下がった場合もMCPAの活用が適しています。CPAが下がっているということは、費用対効果が高いということです。施策ごとのMCPAを計算して、CPAが下がった要因となる施策を特定しましょう。
施策が特定できたら、なぜこの施策のコストパフォーマンスが優れているか考察します。その理由が分かれば他のキャンペーンに応用することもできます。
WEB広告のMCPA分析の全体像
WEB広告のMCPA分析の全体像を紹介します。MCPA分析は下記3STEPで実行します。
STEP1.マイクロコンバージョンの設定
MCVを設定する前にコンバージョンにつながる指標を見極めましょう。設定時は、ユーザー獲得数の差がある部分に注目します。例えば、ECサイトの商品ページのアクセスは多いが、注文ページのアクセスが少ない場合は、商品ページにMCVを設定します。
Google広告であれば、管理画面からイベントとして追加するか、Googleタグマネージャーを使用して設定します。
STEP2.マイクロコンバージョンの測定
タグ設置が完了したら、MCVを測定します。測定したMCVは、管理画面から確認可能です。
STEP3.MCPAの確認・分析
最後にMCPAを確認・分析していきます。MCVごとのMCPAを確認して、自社広告運用の課題を見つけます。
マイクロコンバージョンの設定方法(Google広告の場合)
Google広告のマイクロコンバージョン設定方法は下記の通りです。
STEP1.コンバージョンを選択
引用:Google Ads
Google広告の管理画面から「ツールと設定」→「コンバージョン」を選択します。
STEP2.コンバージョンアクションを選択
引用:Google Ads
「ウェブサイト」「アプリ」「電話件数」「インポート」から該当するコンバージョンアクションを選択してください。各アクションの詳細は下記の通りです。
コンバージョンアクション | 詳細 |
ウェブサイト | ECサイト/リンククリック/ページビュー/登録 |
アプリ | アプリのインストール/アプリ内購入 |
電話件数 | 広告経由の電話数/LPに掲載した電話番号への問い合わせ |
インポート | Googleアナリティクスなどからデータをインポート |
STEP3.アクションの詳細を記入
引用:Google Ads
「カテゴリ」「コンバージョン名」「値」「カウント方法」「計測期間」を入力して「作成して続行」を選択します。各項目を記入するときは下記内容を参考にしてください。
記入項目 | 詳細 |
カテゴリ | 購入/カート追加などのアクションを選択する |
コンバージョン名 | 任意のコンバージョン名 |
値 | 各コンバージョンの価値を設定 |
カウント方法 | クリックなどのコンバージョンをカウントする回数を指定 |
クリックスルーコンバージョンの計測期間 | ユーザーが広告クリックしてからコンバージョンを計測するまでの期間 |
エンゲージビューコンバージョンの計測期間 | 動画のエンゲージメント後のコンバージョンを計測するまでの期間 |
ビュースルーコンバージョン計測期間 | 広告表示されてからどれくらいの期間ビュースルーコンバージョンを計測するかの期間 |
アトリビューションモデル | ラストクリック/ファーストクリック/線形/減哀/接点ベースから選択 |
コンバージョン列に含める | 自動入札の時はONにする(Google推奨) |
STEP4.タグ設置方法選択
引用:Google Ads
コンバージョンアクションを作成した後は、タグ設置方法を「自分で追加」「メールで送信」「Googleタグマネージャー」から選択します。詳細は下記の通りです。
タグ設置方法 | 詳細 |
タグを自分で追加する | HTMLコードを自身でWEBサイトに貼り付ける方法 |
タグをメールで送信する | タグとその実装手順を担当者にメールする(自分でタグ設置する権限がない場合に有効) |
Googleタグマネージャー | HTMLコードが不要な設置方法 |
STEP5.タグ設置
引用:Google Ads
選択した設置方法にて、コンバージョンタグを設置すれば完了です。
マイクロコンバージョン設定を行う際の注意点
マイクロコンバージョン設定を行う際の注意点は下記の通りです。
自動入札を利用している場合は「コンバージョン列に含める」を有効にする
MCVのデータを自動入札に活用する場合は「コンバージョン列に含める」を有効にする必要があります。
Google広告のスマート自動入札戦略(目標コンバージョン単価、目標広告費用対効果、拡張クリック単価)ではコンバージョン列のデータを使用するため、この設定をオンにしなくてはいけません。
設定するMCVのボリュームや傾向を理解する
MCVを設定するときは、ボリュームや傾向を理解しておく必要があります。
これは、設定したMCVの数が少ないと改善に繋がりにくいためです。WEBサイトの階層ごとの傾向を把握して、ボリュームが一定数以上のページにMCVを設定するようにしましょう。
MCVはコンバージョンではない
MCVは、通常のコンバージョンとは異なるということを忘れないようにしてください。
MCVのほとんどはコンバージョンを達成していないユーザーです。ですので、MCVが多いほど、広告運用が上手くいっているということではありません。
MCVとコンバージョンを同じ認識で分析すると、改善が難しくなるので、MCVの定義をしっかり理解しておきましょう。
マイクロコンバージョンの測定方法(Google広告の場合)
マイクロコンバージョンの測定方法(Google広告の場合)を紹介します。MCVの確認は「分類を使う方法」と「コンバージョンアクション一覧」の2つの方法があります。
それぞれの手順は下記の通りです。
分類を使う方法
引用:Google Ads
分類を使う方法でマイクロコンバージョンを確認する場合は、「キャンペーン」→「分類」→「コンバージョン」→「コンバージョンアクション」を選択すると確認できます。
コンバージョンアクション一覧から確認
引用:Google Ads
コンバージョンアクション一覧からMCVを確認する場合は、「ツールと設定」→「コンバージョン」を選択すれば確認できます。
MCPAの確認・分析方法
引用:Google Ads
Google広告には、MCPAの指標は用意されていないので、MCVのCPAを「MCPA」と仮定して計算しなくてはいけません。
記事冒頭の「MCPAの計算方法」で紹介したように、まずはキャンペーンの総CPAを計算した後に、MCVとして設定した各CPAを算出してMCPAを求めます。
WEB広告運用におけるMCPAの効果的な分析・活用ポイント
WEB広告運用におけるMCPAの効果的な分析・活用ポイントを3つ紹介します。MCPA分析を実施するときは下記内容を参考にしてください。
- メインの分析はCPA
- 改善策を実行するときは必ずA/Bテストを実施する
- 商品の検討期間を必ず考慮する
1.メインの分析はCPA
MCPAの効果的な分析・活用ポイントの1つ目は、MCPAをメインの分析として活用しないことです。あくまでMCPAはCPAの補助となる指標です。必ず「CPA分析」→「MCPA分析」の手順で分析しましょう。
すでにCPAを単体で分析している企業は、CPAを再計算するたびに、MCPAも追跡する習慣をつける必要があります。
MCPAに対応していないプラットフォームも多いので、Excelやスプレッドシートに数式を追加して、CPAを計算するたびにMCPAが自動的に計算されるように設定しておきましょう。
2.改善策を実行するときは必ずA/Bテストを実施する
MCPAにより、課題を見つけて改善策を実行するときは、必ずA/Bテストを実施するようにしてください。改善前と改善後の2パターンでA/Bテストをして、分析が正しかったのかを確認する必要があるためです。
改善前後のデータは、自社広告運用にとって貴重なデータにもなるため、都度、A/Bテストを実行する癖をつけておきましょう。
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3.商品の検討期間を必ず考慮する
MCPAを分析するときは、必ず商品の検討期間を考慮してください。商品の検討期間を考慮しないと正確な分析が実施できないためです。
例えば、自社商品の検討期間が平均3カ月だったとしましょう。今月に新しいキャンペーンを開始した場合、3カ月経過するまでは、当然CPAは高くなります。
これを考慮せずに、MCPAだけでキャンペーン停止などを判断してしまうのは大変危険です。
WEB広告の効果を可視化するおすすめの広告レポート自動化ツール
最後に、WEB広告の効果を可視化するおすすめの広告レポート自動化ツールを紹介します。広告レポート自動化ツールは、MCPA分析を実施するときにも有効なツールとなるので、是非活用してみましょう。
Databeat Explore
Databeat Exploreは、デジタルマーケティングを実施する企業のデータ・ドリブン・マーケティングの基盤となるツールです。
データ・ドリブン・マーケティング実現に向けて課題であった、データの抽出・更新・集計・可視化を自動化することで、担当者がいつでも最新の情報を見て分析することができます。
また収集したマーケティングデータは、BIツールなどの外部連携サービスに出力できるので、さまざまな用途で活用できます。
WEB広告運用における「Databeat Explore」の3つの活用ポイント
Databeat Exploreには下記のような活用ポイントがあります。WEB広告運用を改善したい方は、下記内容を参考にしてください。
- 柔軟なデータ出力
- 自動レポート作成
- クリエイティブ分析
柔軟なデータ出力
各社のオペレーションに合わせた、柔軟なデータ出力が実現できます。各種BIツールやGoogleデータポータルにも自動でデータを出力するので、社内では常に最新のマーケティングデータを反映させた状態で、予算や目標を管理できます。
また、データソースから自動的に必要な情報だけを収集する機能も搭載しているため、データ更新・集計作業にかかる工程の削減も実現可能です。
自動レポート作成
Databeat Exploreは「Google広告」「Yahoo!広告」「各種SNS広告」「SmartNews広告」など多くのプラットフォームに対応しており、これらの広告データを自動で可視化してレポートを作成することが可能です。
また、広告プラットフォームによって異なる指標を自動で統一する機能も搭載しているため、広告プラットフォームごとのパフォーマンス比較が容易になるメリットがあります。
クリエイティブ分析
Databeat Exploreは、広告のサムネイル自動出力にも対応しているので「ディスプレイ広告」や「SNS広告」で重要となるクリエイティブ分析も実施できます。現在、クリエイティブ分析に多くの時間を費やしている企業には、おすすめできる機能です。
まとめ
WEB広告における「MCPA」について紹介しました。MCPAはMCVを1件獲得するのにかかったコストを表す指標です。
主に、CPAの補助的な指標となるため、単体ではあまり利用されませんが「CPA増加の原因を断定できる」「費用対効果をさらに伸ばすことができる」「企業全体のパフォーマンス分析もできる」といったメリットがあります。
ただし、MCPAには「マイクロコンバージョンの設定が必要」「手間がかかる」「シンプルな施策には向いていない」といったデメリットもあるため、分析時には注意が必要です。
MCPAは主に「CPAが上がった場合の原因特定」や「CPAが下がった時にパフォーマンスが高い施策を確認する」といったシーンで利用されることが多いです。他にも「ブログページと商品ページの比較」などのシーンでも活用できます。
WEB広告でMCPA分析を実施するときは「マイクロコンバージョンの設定」→「マイクロコンバージョンの測定」→「MCPAの確認・分析」の手順で進めます。
分析時には「広告レポート自動化ツール」を活用すると、作業が効率化できるのでおすすめです。